だって、ほんとはもっと、
もっと自由なはずなんだから!♪
『CannabisNews』第7号(2001年12月28日発行)より


だって、ほんとはもっと、もっと自由なはずなんだから!♪
 友人と映画を見てヘッドショップに立ち寄った帰り、後ろからつけてきたパトカーに車を停められた。
 2人の会話でも捕まってしまったら大変なので気をつけよう、もし警察に検問をされても持ち物を見せる必要はないとか、そんな話しをしてた矢先のことにも関わらず……。
 警官「ちょっと車を調べさせてくれるかな?」
 友人「えっ?はい……」
 咄嗟の出来事に動揺したせいもあり、言われるがまま何ともあっさりと警察に車を調べさせてしまった(車の掃除もしたって言ってたし、大丈夫だよね)。
 警官に囲まれた車の外からは
 「こぉーんな車から何も出てくるわけねーだろぉ!バァーカ!」と応援団のような見ず知らずのヤンキー君のヤジ。ヤンキー君の声がちょっと愛おしく思える。
 警官があちこち調べる……ゴソゴソ……。
 警官「あっ!出ましたぁ!!」
 (え”っ?!)なんと、何故だか車からはパイプがゴロゴロ。
 私の鞄の中からはガムの包み紙やゴミにまぎれていた「タバコのカス」のような物(???ありゃ?)。
 液体につけられて、
 警官「はいっ♪ 間違いないね。大麻だね。何時何分、大麻取締法違反の容疑でたいほっ♪」
 「ガァ〜〜〜〜〜ンッ! バカァ〜」あえなく逮捕(手錠って、けっこう重いんだね。腰にロープ?あっ、それはやめてかっこわるい)。
 突然目の前の景色が現実のものと思えなくなる。
 車の外からは先程のヤンキー君の「うひょ〜!あ〜ァかーわいそ〜ぉ」と同情とも思えないヤジの声。
(うぅっ。何故?何で?ど〜してぇぇぇ????)
 はぁ〜もうしょうがない……。とにかく後は落ち着いて取り調べを受けよう。妙に冷静になる。私はそのまま留置所に。
 バックの中のカス、数字にすれば0.0いくつとかそのくらい(よく見つけたね)。あまりにもショック。あまりにもちっこい数字。とにかく埃のようなカス。

 いったいどんな所に連れて行かれるのだろう……。モノポリーゲームの「Go to Jail……50$払って外へ出る」の言葉が頭の中で何度もくり返される。Go to Jail...Go to Jail....Go to Jail...(あ〜、ゲームだったらいいのにな...)
 白で統一された思ったより清潔で明るい留置所。キョロキョロ見回しては映画のような脱走を空想する(無理、ムリ)。
 「ここではルールに添った生活をしてもらいます。何時に起床、掃除、化粧水は…….眠れない時の睡眠薬は医師に」などと看守さんにいくつかのルールの説明を受ける。
 ルール? 四角い箱から一歩も出れなくて、やることもなく、出たとしても手錠に繋がれているんだからね。守るか守らないかってことでもない。絶対に破れないように出来ているのですから……。

 強制的生活の始まり。
 深夜だったため留置所に着きすぐ就寝(起きたら夢でありますように……)。
 大麻で捕まったという子は私を含め同室の2人だけ。その子も私と同様ヘッドショップの帰りにBFに頼まれて30gの大麻をお腹に入れて持っていたところ2人で逮捕。この子の場合は彼と罪の擦り合いで意見が合わず取り調べが長引き、私がいた時点で20日以上拘留されていました。S漬けにされちゃったAVギャルの子はSを止めたくて自分から捕まるように警察に飛び込んだそう、LやEやコークをアメリカ人のBFのために運ぶ役を引き受けたあげく、あちこちの拘置所を回されてやって来たSM嬢。母国で亡くした親や兄妹のため、医療カウンセラーになりたくて日本にやって来たというコロンビア人の不法滞在の子など同室の20代前半〜30代前半のちょっと生きるのに不器用だった素直でかわいい女の子たち。             
 いろんなことを悩み、反省したり今後のことを考え話し合ったりもしました。番号で呼ばれるのがイヤでニックネームで呼び合ったりして担当さんによく怒られた。わたしたちが笑ってると怒る看守さん。基本的に私語はだめらしい。
 休み時間に外で体操をしていたら、一人の女の子がやって来た。
 「あのー、私と何処かで」「!あっれぇ〜?!」「やっだぁ〜こんな所で、こんにちわ」
 なんと知り合いのヘアメイクの子に会ってしまったのです。なんと言う偶然。
 彼女は飲酒運転で検問をブッちぎってしまい5日間拘留されたという……そんな具合で留置所内は清く正しい合宿生活のような具合だったのですが、拘留期間はもちろん起訴が決まっても、裁判待ちも関係なく皆手錠とロープにつながれ練り歩かされた。検事調べではお尻がいたくなるほど待たされて、手錠のままパンを食べなくちゃいけないの。この時に泣いちゃう子も多かった。何とも言えない犯罪者気分に陥る。
 接見では格子の向こうで「バカねぇ」と優しく笑う母の顔。不安そうでブルーな彼の顔。弁護士のことやら何やらで迷惑をかけた姉の顔(私は元気だがら大丈夫です。私の軽率な行動のためご迷惑をかけた皆さんごめんなさい)。
 私の場合、極、極少量の所持だったので不起訴、10日間の留置で晴れて釈放になったのですが。

 不起訴であったと言えども廻りの人達の態度はキツイ。
 捕まるなんて、どうしようもないヤツだな、あの子を救う、いろいろな声が聞こえてくる。
 What?私は病気?犯罪者なんでしょうかぁ〜〜〜〜〜〜?(Oh !! Noooooo〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!)
 「あの〜私、不起訴なんですけど」なんて言ってみても「何それ?反省してないの?でも捕まったんでしょ」
 「だからぁ、前科にはなってない」
 「でもやってたんでしょ。こんどやったら終わりだよ」
 終わりって、やったって。
 何だかすごいことをしでかした?
 自分がすごいダメ子になっちゃったみたい。
 友人たちは私が不起訴であろうと捕まったってことだけで言いたい放題……に思えたし。
 母は私が辛い思いをしてるのではないかとちょくちょく訪ねて来るようになった。
 誰も解ってくれない……孤独だなぁ……こんなじゃなかったのに……。
 独立し自分で創って来た世界。ガラガラ崩れていってしまう音が聞こえるみたい。
 本当に親身になってくれている友人に対しても、あんな辛い思いはあなたには分からない……。
 自分のことばかりで被害妄想になり、人を理解することもできなくなっていました。
 いろんな意味で暮らしにくい社会……。

 その日もイジケて(ha〜暮らしにくい国だぜ……まったく……)なんて思いながら昔のレコードの整理していました。
 一枚のインディーズのオムニバスが出て来た。15年程前のもの。懐かしい。順番に聞いてみる。
 〜♪やっちゃえ!もっと!やっちゃえ!自由にっ!今!ここで!304の不自由35.3%の安定♪〜
 あぁ、これ……思い出した。裸足でノーブラでTheWHOのピート・タウンゼントみたいに腕を回しながらギター弾きまくって叫び歌う3人組の女の子バンド。懐かしいなぁ……。
 〜♪秘密がいっぱい分らないことだらけ、どうなっていくの聞かせて♪〜(ストレートに訴えかけるなぁ...すごいなー...)
 〜♪もっと!自由に!♪〜
 自由かー。
 〜♪もっと!自由に!♪〜
 だよねーやっぱり。。。
 昔のことやら最近の出来事までが頭によぎる……んっ?ちょっと待って……。
(私は?今何をやってるんだろ?)
(わたしイジケてるだけちゃうのん?)
 いつの間にか何か忘れてたような……大事なこと……。
 〜♪ここから抜けだせ、ここからはみ出せ!やっちゃえ!自由に♪〜

「もうこんな目に遭いたくない。こんな目に遭うんだったら私、海外に行くもの……」と
しばらくの間はいろんなことにとてもネガティブになっていたんですね。

 あぁバカみたい、自分が良いものと信じていた
 しかもたった少しばかしのそれで起こった問題で。何で私こんなイジケ虫になってんだろ……?
 自分で起こした問題。まわりを気にして勝手に苦しんでイジケてるだけちゃうのん?
 私には見守ってくれている家族や友人だっているというのに。
 自分の創ってきた世界の崩れる音は自分で創っていたみたい。
 ありがとうTheNews……すっかり忘れていましたが、何か元気になりました。
 ♪もっとっ!自由にっ!♪
 懐かしいレコードに励まされたような感じ。

 また一つ逞しくなれた気もします。

 海外へ行くのも良いけれど
 私は日本人でこの国も嫌いじゃないよ。自由で暮らしやすい国になっていってくれたらやっぱり嬉しい。
 やらねばいけないということは何もないけど
 人生の限られた時間の中で何ができる?その中で何を得る?
 自由で住み良い社会目指して。私のため、私の中の自由。
 これから何ができるかな。
 だって、ほんとはもっと、もっと自由なはずなんだから!♪

(Harvesco)