2003年衆議院選挙 ――
カンナビストの政治への関わりについて


2003年衆議院選挙 ― カンナビストの政治への関わりについて

カンナビストは政治への関わりをどのように考えているか。その姿勢を理解していただくために2003年の衆議院選挙に際し、公表した「衆議院選挙の投票について」(11月6日)と「衆議院選挙の結果について」(11月11日)というふたつの文章を掲載します。
ふたつの文書は、2003年の衆議院選挙についてだけでなく、わたしたちが選挙で投票(支持政党を選択)する際の指針、つまり各政党をどのように見ているか、さらには選挙結果の分析を通して政治の世界をどのように見ているかを明らかにしたものです。
カンナビストが大麻自由化(非犯罪化)を政治の世界でどのように実現しょうと展望しているのか、政治への関わり方をどのような形で行っていこうとしているのか理解していただく参考になればと思います。

 

■選挙前に公表した文書■

衆議院選挙の投票について
(2003年11月6日/カンナビスト運営委員会)

11月9日(日)は衆議院選挙の投票日です。日本に於いて、西欧先進国に並ぶ水準での大麻の規制緩和・容認化(=非犯罪化)を実現させるために、この選挙でどのような選択をするのが最善か、わたしたちは以下のように考えます。大麻自由化を願う方々が有権者として投票する際のひとつの参考にしていただければ幸いです。

(1)衆議院選挙の争点と「大麻問題」について 

「大麻問題」について、これまで一方的に大麻を迫害してきた行政当局の姿勢、そしてそれを補完する役割をしてきたマスコミ報道により、国民(有権者)の間では未だ大麻についての偏見がまかり通っています。

また、今回の選挙の争点とされている景気対策、年金改革、道路行政のあり方、イラク支援問題などの主要な問題に比し、当然ながら「大麻問題」は選挙の争点に持ち出されるような状況にありません。仮に「大麻」を掲げた特定の政党(例えば「大麻党」とか)があったとしても、全体状況の中では、物珍しさだけが先行するエピソード的存在に貶められてしまうのではないでしょうか。

しかし、「大麻問題」は選挙の争点ではないと言っても展望がないわけではありません。というのは、わたしたちカンナビストは、創設以来、一貫して「大麻問題」は人権問題であると語ってきました。ここでその核心を要約しますと、それほど有害性のないもの(大麻)を、重罪扱いしている現状は公権力による人権侵害なのではないかということです。

つまりこの国(日本)がより人権を尊重する社会になることが、即、大麻の自由化に結びついていくのだと思います。そのことは、EUを中心にした西ヨーロッパの国々に於ける大麻自由化の進展状況と、それらの国々の人権状況を比較してみれば一目瞭然です。端的に言って、人権を守ることに配慮している国は、大麻の自由化も進んでいるのです。

また、この間、政治家・政党への働きかけを行ってきた手応えからも、人権に配慮する姿勢を持った政治家・政党の方々は、「大麻問題」についてもわたしたちの主張を理解してくれることが明らかになってきました。

このような事情を踏まえて、わたしたちは、ある程度、中期的な視点から日本の政治・社会がより人権に配慮した方向にバランスが移るようにしていくことが、いま選べる最善の選択ではないかと考えます。

少し横道に逸れますが、例えば柿でも栗でも桃でも、果実を収穫するまでには、いろいろな苦労があるとかと思います。良い果実をたくさん取りたいというのなら、土壌や肥料から考えていかねばなりません。大麻の「非犯罪化」という果実を得ようとするとき、土壌や肥料の豊かさに当たるのが、その社会の人権状況(どれぐらい人権を尊重している社会かということ)ではないかと思います。

わたしたちは、この選挙を通して「大麻問題」に理解を示すような政党・政治家を増やすことを獲得目標にしたいと思います。それは再三、述べていますが直接「大麻」そのものに言及しなくても、人権を守ることを公約に掲げている政治家・政党の議席が増えることである程度達成されます。それにより、わたしたちが展開している政党・政治家への働きかけが、より有効な形で実を結ぶ土壌が作られるのです。

(2)どの候補者・政党を選ぶべきか

それでは次にどの候補者が、どの政党がいま述べたような基準を満たしているでしょうか。わたしたちは、今回、特定の候補者や政党を推薦してはいません。自民党、民主党、公明党、共産党、社民党、どの政党が良い、あるいは良くないと批判するつもりはありません。しかし、それではどの政党・候補者を選べばいいのか見当がつかないという方も多いかと思います。そこで最終的には、自分で選ぶということを前提にしたうえで、次のような指針を提起したいと思います。

衆議院選挙は「小選挙区選挙」と「比例代表選挙」の2つからなる小選挙区比例代表並列制になっています。

●「小選挙区選挙」の投票用紙には、候補者氏名を記入します……選挙広報や政見放送などによく目を通し、「人権」、あるいは「官僚」支配からの脱却を主張に掲げた候補者に一票を投じることをお薦めします。その候補者がどの政党に属しているかは、この場合、問いません。あくまで人物本位で選択すればいいのではないかと思います。

●「比例代表選挙」の投票用紙には、政党等の名称を記入します……今回の選挙では、各政党が自らの政策をマニフェスト(政権政策)として公表し、それを基にした論戦が行われています。しかし「大麻問題」に限ると、各政党のマニフェストを比較するよりは、以下に紹介する参考資料を基に判断する方が適切ではないかと考えます。

参考資料としてとりあげるのは、朝日新聞が今回の選挙に立候補する予定の候補者に対して行ったアンケート(一部)です(10月29日付け朝刊※参考資料≫ジャンプ)。この資料は、各政党の候補者に対し、治安の維持のために個人の権利が制約されるのは当然だと考えるかどうかを質問した集計です。

わたしたちの見るところ、大麻の取り締まりを正当化している意見は、詰まるところ、広い意味で治安の維持のためには個人の人権を制約してもかまわないという考え方に基づいているように思えます。わたしたちは、このような個人の人権を制約する考え方には異議を唱えてきました(誤解のないように補足しますと、わたしたちは凶悪犯罪などが起きない社会を望んでいますし、「治安の維持」自体を否定しているのではありません)。

従って、治安の維持のために個人の人権を制約することには反対・どちらかと言えば反対という意見の政党は、大麻の非犯罪化に賛同する素地があると考えています。

ちなみに資料によれば、人権の制約に反対・どちらかといえば反対という意見は、自民党と保主新党は、ほぼ同数で各20%。民主党と公明党がやはりほぼ同数で各60%。共産党と社民党は同様に各100%近い数字になっています。

このパーセンテージが比較的高い政党の方が大麻の非犯罪化に賛同する素地があるということになります。ただしイデオロギー的な背景から現在の共産党には大麻の非犯罪化に関しあまり期待できないと思われることもあり、純粋に数字の比較だけで100%を示している政党だから推奨できるとは言い切れないことも考慮に入れておいてください。

以上のような参考資料を基にして、最終的には自分の判断で投票されることを期待いたします。

※参考資料
候補者アンケート/衆院解散・総選挙が確実になった9月末から立候補予定者に配布、回収した。立候補を届け出た1159人のうち1100人から回収を得た。主要政党の回答数は、自民300、民主271、公明53、共産314、社民64、保守新11。(朝日新聞10月29日付け朝刊に掲載)

 

■選挙後に結果をふまえ公表した文書■

衆議院選挙の結果について
(2003年11月11日/カンナビスト運営委員会)

(1)衆院選の結果は、大麻自由化(非犯罪化)にプラス!

衆院選が終わりました。大新聞の一面見出しを見ると、この選挙の結果を「自民伸びず 民主躍進/与党絶対多数、政権継続」(朝日)、「自民後退、民主が躍進/2大政党化強まる」(毎日)、「与党が『絶対安定多数』/民主躍進2大政党へ」(読売)などと評しています。国政全体をフォローする視点からは、そういう評価になるのは分かります。

カンナビストは先週、「衆議院選挙の投票について」(11月6日)という文書を提起しました。この呼びかけは、大麻自由化のムーブメントからの立場から衆院選をどのように見ているか述べたものです。つまり上の新聞見出しで引用したような国政全体の視点ではなく、大麻自由化に絞った上での視点でした。さて、わたしたちは、この選挙結果をどう評価しているか明らかにしたいと思います。

わたしたちは、今回の選挙では、各政党の候補者に対し、治安の維持のために個人の権利が制約されるのは当然だと考えるかどうかを質問した(朝日新聞社の)アンケート結果を政党選択の目安にしたいと提起しました。

そして「ある程度、中期的な視点から日本の政治・社会がより人権に配慮した方向にバランスが移るようにしていくことが、いま選べる最善の選択ではないか」と述べました。

詳しくはその文書を見ていただきたいのですが、ここではその一部を引用いたします。

「ちなみに資料によれば、人権の制約に反対・どちらかといえば反対という意見は、自民党と保守新党は、ほぼ同数で各20%。民主党と公明党がやはりほぼ同数で各60%。共産党と社民党は同様に各100%近い数字になっています。

このパーセンテージが比較的高い政党の方が大麻の非犯罪化に賛同する素地があるということになります。ただしイデオロギー的な背景から現在の共産党には大麻の非犯罪化に関しあまり期待できないと思われることもあり、純粋に数字の比較だけで100%を示している政党だから推奨できるとは言い切れないことも考慮に入れておいてください。

以上のような参考資料を基にして、最終的には自分の判断で投票されることを期待いたします。」(※「■選挙前に公表した文書■」参照)

このような視点から選挙を総括していくと、今回の選挙結果は大きな前進だと思っています。大麻自由化に有利な方向に向かっているとも思います。その理由は、以下のような分析からも明らかです。

(2)衆院の勢力バランスの変化を読み解く

●「人権の制約に反対・どちらかといえば反対」という意見が過半数を超える約60%の2つの政党が43議席増えました。

民主党/177議席(選挙前比プラス40議席)
公明党/34議席(選挙前比プラス3議席)

わたしたちにとっては、民主党が野党で、公明党が連立与党であるという違いは、それほど問題にはなりません。(再三述べてきましたように)わたしたちは国政全体を視野にして与党対野党というような構図では政界を見ていません。偏見なく「大麻問題」を理してくれる政治家・政党であるなら与野党は問わないからです。また、特定の宗教団体に組みするものではありませんが、かといって特定の宗教団体が支持母体の政党だからといって忌避するのも一種の偏見ではないかと思います。その政党が真摯に人権を尊重する姿勢を堅持しているのならば問題ないと考えています。

連立政権内で影響力を増した公明党、2大政党の一翼を担う政党になりつつある民主党の両者が、こと人権については共通した姿勢であることは、わたしたちにとって はプラスの作用をすると思われます。

●「人権の制約に反対・どちらかといえば反対」という意見が約20%の2つの政党が15議席減りました。

自民党/237議席(選挙前比マイナス10議席)
保守新党/4議席(選挙前比マイナス5議席)

少し補足しますと、わたしたちは自民党の中にも「大麻問題」に理解を示す政治家がおられるであろうことを期待していますので、自民党自体を否定する意見ではありません。

2大政党化の到来といった政界再編の影に隠れる形になっていますが、人権の制約に賛成するパーセンテージが自民党よりも高かった保守新党が大きく後退(結局、解党し自民に合流)したことも併せて、日本の政治・社会がより人権を配慮する方向にシフトしていくのではないかと思われます。これは新聞・テレビの報道では見過ごされている社会の底流の動向ですが、動かしがたい厳然たる事実であり、肯定的に評価できます。

●「人権の制約に反対・どちらかといえば反対」が約100%という2つの政党が23議席減りましたが、わたしたちは既に「純粋に数字の比較だけで100%を示している政党だから推奨できるとは言い切れない」と述べてきましたように、これらの政党に関してはあまり期待はしてこなかった経緯もあり、大麻自由化にとってはそれほど影響がないと判断しています。

共産党/9議席(選挙前比マイナス11議席)
社民党/6議席(選挙前比マイナス12議席)

以上のように、わたしたちは、今回の衆院選の結果を肯定的に評価しています。日本の政治・社会がより人権を配慮する方向にシフトしていくことが読みとれるとともに、大麻自由化を実らす土壌が豊になってきたことを実感しています。

カンナビストは、これまでの一般への啓蒙活動に加え、今後、さらに政治家・政党への働きかけを強化していきます。今回の選挙を通して、カンナビストのムーブメントを支援している仲間が、有権者として政治や選挙にも関心を持つようになり、その力によって自由で暮らしやすい日本を創っていければと願っています。