非犯罪化とは
非犯罪化
ディクリミナリゼーション
decriminalization

非犯罪化。それまで犯罪として処罰されてきた行為を犯罪でなくして処罰をやめること。従来犯罪として刑罰を科していた行為に、刑罰に代えて過料等の行政罰を科す場合も含まれている。第二次世界大戦後の価値観の多様化した社会を背景に、イギリス、アメリカ、ドイツなどの諸国において、被害者なき犯罪や軽微な犯罪の非犯罪化が議論された。例えば、ドイツでは、戦後の刑法改正によって、軽微な犯罪を刑法典から除去し、秩序違反として行政罰を科すことにした。非犯罪化の根拠としては、イ)特定の道徳を保護するのは刑法の任務ではないとする刑法の役割に関する考え、ロ)個人の自律権を最大限尊重すべきであるという考え、ハ)社会的コントロールの手段としての刑罰の使用は必要不可欠な場合に限定されるべきであるという考え、ニ)刑事司法制度の効率的な運営のためには、軽微な犯罪を非犯罪化して、国家の限られた資源をより重大な犯罪に振り向けるべきであるとする考え、など様々なものがある。わが国でも、単純賭博罪、自己堕胎罪、重婚罪、猥褻物頒布罪などについて非犯罪化の議論がなされている。

『法律学小事典 新版第二刷』 有斐閣 1996.5.30